コンピュータ史黎明期の人物伝集です。バベッジ、チューリング、ノイマンなど、コンピュータとその理論を生みだした天才たちを列伝ふうに扱って、独自の文明批評を展開しています。初期のコンピュータ設計者が想定していた人間観の偏向性を通して、情報化社会の倒錯性や歪みを解剖しています。設計者の心の歪みがコンピュータの歪みとなって反映され、それを使うわれわれの感覚をも歪めている可能性を指摘します。西垣教授はまた、初期の設計者たちの心の歪みは、近代文明を生み出した歴史そのものに深く根ざしているとしています。その意味で本書は近代思想論であり、人間心理の暗部を解剖した文明批判でもあります。
　しかし、それ以上に文芸作品の色合いが濃い本です。巧みなレトリックと魔術性を帯びた構成は、荒俣宏の作品を思わせます。コンピュータの本質を“言霊機械”とするならば、言霊の怪物であるゴーレムのエピソードを巻頭に持ってきた手法は、見事な象徴表現といえるでしょう。
　なお、本書の単行本初版は平成３年７月に岩波書店から出版され、同年のサントリー学芸賞（芸術・文学部門）を受賞しています。　（カゼの秀丸さん）

このホームページは、まだまだ赤ちゃんの段階です。お気付きの点がありましたら、メールか掲示板への書き込みをお願いします。あなたがお持ちの情報をお待ちしております。頂いた情報は、このホームページ並びに将来完成するはずのコンピュータ博物館で使用させて頂くことを明記しておきます。メールはこちらまで