Christian Wurster,The Computer,an illustrated history,TASCHEN Köln,2002.の邦訳です。コンピュータの歴史を飾った名機の写真集です。『A COMPUTER PERSPECTIVE／計算機創造の軌跡』や、『目で見るデジタル計算の道具史』よりもビジュアル指向が徹底している本です。『計算機創造』や『目で見る……』が、学術的な資料写真であるのに対して、本書に収録されている写真は、製品の広告写真であったり、ファッション写真（ＩＢＭのメインフレームを背景に、ファッション・モデルがポーズをとるなど！）などのコマーシャル・アートが中心です。版元も、写真集・美術書専門書肆のようで、一般のコンピュータ書籍とは異質です。「オブジェとしてのコンピュータ」というコンセプトすら感じられます。
　でも、資料的な価値が薄いわけではなく、シッカルトの計算機から、最新のパソコンや携帯電話まで、コンピュータ史を完全に網羅しています。解説文は、分量こそ付け添え程度ですが、内容的にはかなり興味深い文化史的コラムになっています。テーマのマイナーさから考えれば、３千円という定価は安すぎるほどだといえるでしょう。　（カゼの秀丸さん）

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