デビッド・カトラーは、ＤＥＣ社で、伝説的なＶＡＸコンピュータのＯＳ「ＶＭＳ」を開発した。ビル・ゲイツは、カトラーの技術力と、職人気質のストイックな姿勢に惚れ込み、マイクロソフト社に引き抜いた。

　カトラーは、マイクロソフト社の社運を賭けた、ウィンドウズＮＴの開発をまかされた。彼の開発手法は、マイクロソフト社のプログラマーたちにカルチャー・ショックを与えた。カトラーは、ＯＳのカーネルがある程度できあがると、出来かけのカーネルを使って製品開発を続行することを、スタッフに命じた。ＮＴの開発環境に、ＮＴ自身（未完成の）を使うのである。こうすればプログラマーは、仕事の能率を上げるために、必死でバグ取りをするようになる。カトラーはこの作業をはじめるにあたって、
「さあ、みんな。これから、自分で作ったドッグフードを食べるんだ」
　と、言った。