青空文庫で、徳富蘇峰さんの著作を電子化させて頂いています、田部井保と申します。青空文庫の活動に参加して日が浅いという事もあり、個人としての意見とさせて頂きたく思います。
私は、以前から徳富蘇峰の『近世日本国民史』を読みたいと考えていました。ただどうすれば良いのか解らず、そのままにしておりました。そして今年のブックフェアである本を購入し、その本の記述から徳富蘇峰さんの著作権が今年の1月1日で切れている事を知りました。早速、青空文庫を訪ねてみると、徳富蘇峰さんの作品には全く手が付けられていない事が判りました。誰もやっていないのだったら私がやろうと思い、徳富蘇峰さんの作品を手に入れようとしたところ、『近世日本国民史』については、なかなか手に入らない事が判り、『将来の日本』『吉田松陰』なら最近の本で比較的手に入れ易いという事が判りました。『吉田松陰』についてはすでにネット上で公開されている事を確認したので、『将来の日本』の電子化を青空文庫で行なう事にしました。この時から青空文庫の工作員となりました。作業を始めてしばらくすると『近世日本国民史』は古本でならなんとか入手できそうだという事が判り、時事通信社版の第一巻を手に入れましたが、こちらは校訂者の著作権が入りそうで、底本には出来なさそうでした。それからまたしばらくして、明治書院の普及版全50巻を手に入れました。こちらは著作権の問題が無さそうです。『将来の日本』の電子化が終わったら『近世日本国民史』の電子化作業を行なおうと思っています。
『近世日本国民史』、比較的最近に講談社学術文庫から何冊か出版されましたが、こちらもほぼ絶版状態のようです。欲しければ古本を当たるか図書館に行くしかありません。それに100巻すべてではありません。それから、講談社学術文庫のものは、校訂が結構入っている模様で、オリジナルのものを読みたいと考えたら古本を当たるしかありません。古本の場合、すべての古本屋に同じ本が揃っている訳ではないので、手にとって見る事が出来ない場合がほとんどだと思います。最近は便利になりインターネットで古本を購入できますが、前述したとおり、手にとって見る事ができないので、躊躇してしまう事が多いのではないでしょうか。私の場合は入力するという目的があったので、大金を出して買いましたが、普通の人はそんな博打はなかなか出来ないと思います。それから図書館ですが、家の傍の図書館では『近世日本国民史』の第一巻は置いてありませんでした(区で検索したので、その区には全く無い状況です)。このように現状『近世日本国民史』は、一般の人が簡単に目にする状況にありません。『近世日本国民史』を目標にして探せば見つかるが、ある人が偶然目にして読むという機会はほとんど無いと言って良いと思います。
50年経って、生き残る本もありますが、片隅に追いやられてしまう本も少なくないと思います。そういった本に価値がないかと言えば、そんな事はないと思われます。著作権が現行の50年ならば、徳富蘇峰の『近世日本国民史』、今電子化して、誰かが見たいと思った時に、いつでも見られるようにする事が出来ます。著作権がこれで70年になると、いつでも見られるのが20年遅れ、その間にますます存在が希薄になってしまうかも知れません。70年に延長して恩恵を受けるのは、ほんの僅かの本で、それ以外の大部分の本は、ますます読まれないという事になってしまうと思われます。作者がそれを望んでいるでしょうか?たくさんの人に読まれたいと思っているのではないでしょうか。 |